ストーリー

  

「私も誘ってくれるの?」

永遠亭の亭主、蓬莱山輝夜は突然の誘いに戸惑う。

永夜事変からもうすぐ一年。
概ね平和な幻想郷の一角にて、夜の茶会が計画されていた。

「当然だぜ」

茶会の主催者、霧雨魔理沙はニカッと白い歯を見せ
お前も幻想郷の一員だからなと付け足した。

「そうね、あんたもいらっしゃいな」

縁側で緑茶を注ぎ、一息ついた神社の巫女
博麗霊夢もそれに同意する。

茶会に特に趣旨は無い。
虫の声に耳を傾け、のんびりと茶を啜るだけのもの。
だが、こうやって集まることの少ない輝夜にとっては
それだけでも十分に楽しみなことだった。

  

  

「ダメです」

「どうして?永琳」

だが、そんなささやかな楽しみも
輝夜の側近 八意永琳は快く思わない。

「貴方は仮にも永遠亭の主です」

永琳は呆れ、吐息を漏らす。

「そんな貴方が夜中にホイホイと出かけてしまってはどうなります?」

永琳とて、輝夜たっての願いを無下にしたいわけではない。
だが、数多の兎たちを統べるべき主が私用で、
しかも夜遊びのために出かけるとあっては
兎たちの主に対する信用は、最悪の場合失墜するであろう。

「でも・・・・・・」

「でもではありません」

願いは虚しくも一蹴され、すごすごと部屋へと帰る輝夜。
しかし、これで引き下がる彼女ではなかった。

  

  

「姫、こんなこと師匠にバレたら怒られますよ・・・・・・」

「そのときは、貴方も一緒に怒られてよね♪」

「そんなぁー・・・・・・」

輝夜は永琳の弟子である鈴仙とともに永遠亭を抜け出した。
見つかってしまっては、強い叱咤を受けるだろう。
それでも、輝夜は夜へと飛び出した。楽しい茶会に行くために。

  

月は、夜道を歩く二人を優しく照らす。永い夜はまだ始まったばかり・・・・・・。

  

もどる